小児の鼠径ヘルニア(脱腸)の症状や検査方法。年齢や遺伝は関係ある?

小児鼠経ヘルニアは珍しい病気ではありません

小児鼠経ヘルニアは珍しい病気ではありません鼠経ヘルニアは、身体の前面の胴体と足の境目である鼠径部にふくらみができる病気です。このふくらみの中には腸などの組織が入っています。内臓を支えている筋膜が何らかの原因で破れる、ゆるむことで腸などの組織が鼠径部の皮下にふくらみとして現れています。一般的には脱腸と呼ばれており、成人男性に多い傾向がありますが、女性や乳幼児を含む小児の発症も珍しくありません。

小児の鼠経ヘルニア 発症の年齢や原因

小児の鼠経ヘルニアは先天的な原因によって起こっています。腹壁が十分成長しないまま生まれてきてしまった状態であり、奇形ではなくその部分の成熟が遅れただけです。
男児の場合、生まれる直前に精巣が陰嚢に下りてきますが、この時に腹膜も一緒に引っ張られて下降して袋状になります。これは通常、自然に閉じるのですが、うまく閉鎖できなかった時にそこへ腸などが入って鼠経ヘルニアになることがあります。陰嚢水腫は鼠経ヘルニアに似ていますが、中身が腸などの組織ではなく水がたまったものです。陰嚢水腫はふくらみの大きさが変わらず痛みがないことが多く、それが大きな特徴になっています。なお、女児の乳幼児期には精巣の下降はありませんが同様に袋状のものができることがあり、腸ではなく卵巣の脱出が多い傾向があります。
なお、鼠経ヘルニアと遺伝の関係は明確になっていませんが、鼠径部周辺組織の形が親子で似ることがありますので親子の発症が起こりやすいとも考えられます。

小児鼠経ヘルニアの症状

小児鼠経ヘルニアの症状力んだ時、咳をするなど腹圧がかかった時に、鼠径部にふくらみが現れます。
乳幼児の発症も多く、赤ちゃんが力んだ時に鼠径部にふくらみが現れる場合は、鼠経ヘルニアが疑われます。1歳6ヶ月検診、3歳検診などで見つかることもよくあります。ただし、小児鼠経へルニアは見逃されることも多く、20歳代など若年層に見つかる鼠経ヘルニアのほとんどは、小児鼠経へルニアが放置されたものか、いったん自然治癒して再発したものです。

小児鼠経ヘルニアで注意したい嵌頓とは

ヘルニアの状態が長く続くと、鼠径部の組織が徐々に硬くなっていき、飛び出たふくらみが戻らなくなってしまいます。この状態を嵌頓(かんとん)と呼びます。嵌頓が起こって飛び出ている腸などが締め付けられると血流が悪化して壊死してしまい、腸を一部切除する手術が必要になる可能性もあります。ふくらみが戻らなくなったらすぐに受診してください。
嵌頓は状態をみていつ起こるかを予想できるものではありません。鼠経ヘルニアであればいつ起こっても不思議ではないのです。成人の鼠経ヘルニアで嵌頓が起こると緊急手術が必要ですが、小児鼠経ヘルニアの嵌頓は、治療経験の豊富な専門医であれば用手整復というマッサージで脱出した腸をお腹へ戻すことができることが多く、これで状態が落ち着いてからの手術が可能です。

鼠経ヘルニアの診察、検査と治療

鼠経ヘルニアの診察、検査と治療手術以外で治すことはできません。ただし、乳幼児の場合自然治癒することもありますので、手術を受ける適切なタイミングは2歳以降をおすすめしています。自然治癒を期待し過ぎて手術が遅れて嵌頓になる可能性もありますので、あまり先延ばしにするのはおすすめできません。
鼠経ヘルニアで受診された場合、くわしい問診の跡で視診、触診、超音波検査を行い、日本有数の手術経験がある院長が状態や必要な手術内容についてわかりやすくご説明します。その上で手術の最適なタイミングなどについてご相談しています。