ピロリ菌外来とは
ピロリ菌は胃粘膜に感染して胃がんに関与するといわれている細菌です。ピロリ菌感染の有無を検査し、除菌治療を行うのがピロリ菌外来です。
ピロリ菌とは
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は強酸の環境である胃の中に感染する細菌で、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、ポリープなどの原因となるといわれています。そして、ピロリ菌感染は8割の胃がんの原因となっているとWHO(世界保健機関)が報告書を発表しています。さらに免疫や皮膚疾患にもピロリ菌が関与しているという報告もあります。
ピロリ菌は衛生環境の悪い地域で感染率が高く、4、5歳までの免疫力が弱い時期に感染するといわれています。日本は先進国の中では例外的にピロリ菌感染者が多く、40歳代以降に保菌者が多いといわれています。20歳代以降の若い世代では感染率は低下しているものの、経口感染のリスクもありますので、胃がんや胃潰瘍を持つ両親や祖父母から感染するケースも否定できません。
胃がんの早期予防のためにも、感染の有無を確認する検査や除菌治療を受けていただくことが望まれます。
ピロリ菌検査
内視鏡を使う検査と使わない検査があります。
内視鏡を使う検査では、胃の組織を採取してピロリ菌がもつウレアーゼという酵素を検出することでピロリ菌の有無を判定します。同時に粘膜の状態を確認できる、もっとも信頼性が高い検査といえます。
内視鏡を使わない検査では、尿素呼気試験、抗体検査、便中抗原検査があります。
尿素呼気試験は診断薬服用前後の呼気からピロリ菌の有無を判断するもので、簡単で精度が高いことから主流となっている検査です。内視鏡検査同様、ピロリ菌由来のウレアーゼを検出することで判定します。
抗体検査は、ピロリ菌に感染すると体内につくられる抗体の有無からピロリ菌感染を判定します。尿や唾液、血液を採取して検査します。
便中抗原検査は、便を採取してピロリ菌の抗原(構成成分)の有無を検査します。
ピロリ菌検査や除菌治療と健康保険
ピロリ菌検査は健康保険が適用になりますが、対象疾患が以下のように決まっています。
- 胃内視鏡検査によって早期胃がんや慢性胃炎が見つかった
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍がある
- 胃MALTリンパ腫、突発性血小板減少性紫斑病がある
それ以外の方でも検査を受けることができますが、全額自己負担となります。
除菌治療については、胃内視鏡検査でピロリ菌の感染が確認された場合は保険治療となります。
ただし、1次、2次の除菌治療で除菌が成功しなかった場合、3回目の除菌治療からは全額自己負担になります。ピロリ菌が抗菌薬に耐性を持ってしまっているような場合には、保険治療で使用する薬剤以外を使います。
胃内視鏡検査について
当クリニックの胃内視鏡検査は、患者さんの負担軽減を考慮した最新の機器を使用し、専門知識と経験を備えた医師が「苦痛のない検査」を行っています。ピロリ菌検査でも確定診断ができるだけでなく、早期胃がんや胃潰瘍などの早期発見につながる有効な検査です。ぜひとも胃内視鏡検査で確実な検査を受けてください。
ピロリ菌の除菌治療について
ピロリ菌の除菌治療は2種類の抗菌薬(抗生物質)と、胃酸の分泌を抑制する薬を服用します。朝晩の1日2回、7日間服用を続けます。その後1ヵ月ほど間を空けて検査をします。除菌に成功したかどうかは尿素呼気試験で確認します。
1次の除菌成功率は70〜80%ほどですが失敗することもあります。その場合には抗菌薬の組み合わせを変えて2次除菌をします。ここまででほぼ97〜98%除菌に成功します。
2次除菌で成功しなかった場合、3回目以降は自由診療となります。抗菌薬でじんましんや湿疹などのアレルギー反応が出ることがあります。その場合には別の薬剤を使うことも検討できますので、遠慮なくご相談ください。
ピロリ菌除菌治療の流れ
STEP1除菌薬服用開始
2種類の除菌約(抗生剤)と胃酸の分泌を抑制する薬(胃潰瘍治療剤)を1週間服用します。
味覚異常、下痢などの副作用が現れることがあります。また、じんましんや皮膚がただれる、咳や喘息などアレルギー反応と思われる症状が出ることがあります。こうした副作用が出た場合には直ちに服用を中止してご連絡ください。
STEP2除菌判定
1週間の服用終了後、1ヵ月ほど間を空けて判定検査をします。除菌に成功していたらここで終了です。
STEP32次除菌
除菌に失敗していた場合、続けて除菌をされる場合は抗生剤の組み合わせを変更して2次除菌を行います。方法、期間は1次と同様です。
STEP4除菌判定(2次除菌)
1次同様、1ヵ月の間を空けて判定します。この段階でほぼ除菌は成功します。万一2次で除菌に失敗した場合は、以降の除菌は自由診療となります。