過敏性腸症候群(IBS)とは
緊張したりストレスを感じたりすると腹痛を伴って急にお腹がぐるぐると下る、またはひどい便秘を繰り返すという症状の病気です。腸を調べてみても炎症やポリープなどの病変が見られないのが特徴です。ストレスの多い現代社会では10人に1人がこの症状に苦しんでいるといわれています。日常生活への影響も大きく、軽く見て市販薬などで対応していると悪化するリスクもありますので、早めに消化器専門医を受診することをおすすめします。
代表的な症状
過敏性腸症候群には下痢型、便秘型、交互に繰り返す交替型の3つがあります。患者さんの約半数が交替型です。また、排便すると腹痛などの症状が治まるのが特徴です。
以下のような症状がある場合には、過敏性腸症候群が疑われます。
- 過去3か月間で1ヵ月3日以上、腹痛、下痢や便秘の便通異常、腹部不快感の症状を繰り返す
- 1日3回以上水のような便が出る
- 排便回数が週3回以下である
- コロコロしたウサギの糞のような便が出る
- ガスが溜まってお腹がはる
- 無意識にガスが出てしまって人前に出られない
- 睡眠中にはこうした症状が起こらない
過敏性腸症候群の原因
詳しい原因はわかっていません。緊張やストレスによって腸の蠕動運動を司っている自律神経がバランスを乱される、神経伝達物質のセロトニンが腸粘膜から過剰に分泌されるなどが引き金となって便通異常を引き起こすと考えられています。
ストレスは不安や緊張といった精神的ストレスのほか、過労や睡眠不足、暴飲暴食などの身体的ストレスも悪影響を及ぼすといわれています。また、気候変化などの外的要因によって身体が影響を受けることもあるようです。
過敏性腸症候群の検査
過敏性腸症候群の特徴は、腹痛や便通異常の症状はあるけれど腸に原因となりそうな病変が見られないということです。炎症やポリープ、潰瘍があるために下痢や便秘を繰り返す病気はたくさんあります。大腸がんやポリープ、潰瘍性大腸炎などの重大な病気と区別するためにも、いち早く大腸内視鏡検査によって腸の状態を確認する必要があります。
過敏性腸症候群の治療
過敏性腸症候群は日常生活や仕事、学業にとって大きな障害となります。市販薬に頼るのではなく、できるだけ早く主治医や消化器専門クリニックに相談しましょう。患者さんの生活スタイルや体質、病態に合わせて、最善の治療方法を探っていきます。
投薬療法
腸内フローラを整える、腸管の動きをコントロールする、便の硬さを調節する、腸の過敏性を抑制するなどの薬を、病気の状態に合わせて服用します。症状が出る予兆を感じたときに服用して症状を和らげる薬もあります。また、ストレスの影響を抑制するために不安や気分の落ち込みを抑える抗うつ薬などを使うこともあります。
漢方治療
投薬治療として、有効性が認められている漢方の生薬を併用することもあります。
たとえば交替型には桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、下痢型には人参湯(にんじんとう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、便秘型には桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)、小建中湯(しょうけんちゅうとう)などが代表的な漢方薬です。患者さんの体質によって処方される薬は異なります。
水分補給
下痢でも便秘でも水分補給はとても大切です。食事中の水分は直接大腸にまで届くので効果的です。
生活習慣の改善
決まった時間に起きて1日3食の食事を規則正しく摂ることで生活のリズムを整えましょう。
睡眠は大切です。ベッドや枕などを自分に合ったものに変えてみる、寝覚めには朝日を浴びて体内時計をリセットして活動状態に入るようにするなど、気を配ってみましょう。
1日のうち、自分のペースでゆっくりできる時間をもつ、楽しみを持つなど、ストレスを軽減できる生活を心がけましょう。
食事の改善
食事はバランスよく食べることが第一です。とくに食物繊維を積極的に摂りましょう。穀物、海藻、イモ類、豆類、きのこ類などに多く含まれています。
乳製品については小腸が分解、吸収しにくい乳糖が含まれるため、下痢傾向の方には不向きではありますが、乳酸菌で腸内フローラを整える効果もあります。乳製品については医師に相談してみてください。
避けるべきもの
喫煙、過度の飲酒、刺激の強い香辛料、高脂肪の食品などはできるだけ避けましょう。