胃内視鏡検査で見つかる胃や十二指腸のおもな病気について、代表的なものをご紹介いたします。
慢性胃炎
炎症が繰り返されて胃の粘膜が弱って、次第に萎縮していく病気です。胃もたれや胃痛、吐き気を感じたりします。空腹時に胸焼け、食後にむかつきを感じたりして食欲不振になることがあります。炎症があっても、自覚症状がほとんど現れないケースもあります。
慢性胃炎のほとんどでヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染が見られます。これが慢性胃炎を引き起こし、炎症が慢性化することで萎縮性胃炎、胃がんへと進行すると考えられています。
ピロリ菌感染で胃がんの発生リスクは10倍になるといわれています。ピロリ菌は抗菌薬の服用によって除菌することができます。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍
ピロリ菌の感染やストレスが原因で、胃酸と消化酵素によって胃、十二指腸の粘膜や筋層が傷つけられ出血します。最近では、解熱鎮痛薬(NSAIDs=非ステロイド性抗炎症薬)が原因となることもわかってきました。出血した血液は食べ物に混ざって小腸・大腸を通って排出されるため、黒褐色のコールタールのような色をしています。食欲不振、みぞおちあたりがしくしく痛む、吐血があるなどの自覚症状がある場合もあります。
潰瘍が確認されると、胃酸の分泌を抑えた上で粘膜を修復する薬などを処方します。ピロリ菌が確認された場合には、除菌治療を行います。
胃がん、十二指腸がん
胃や十二指腸にできた悪性腫瘍です。胃がんは部位別の罹患者数(男女計、2013年)で1位、死亡数でも上位に位置する、とてもやっかいな病気です。一方で、小腸の一部である十二指腸はがんの発症率が極めて低いといわれています。
どちらも初期にはほとんど自覚症状がありません。上腹部に痛みを感じたり、食欲不振に陥ったりすることで検査をして初めて発見されるケースも多いようです。胃がん、十二指腸がんの早期発見には定期的な内視鏡検査が有効です。
また、胃がんはピロリ菌によってリスクが高まることがわかってきました。ピロリ菌による胃炎や胃潰瘍が慢性化し、萎縮性胃炎から胃がんへと進行すると考えられています。ピロリ菌の感染が確認された場合には、除菌治療を行います。
がんはその進行具合に応じて治療を行います。胃を切除する外科的治療が標準的な手法です。開腹手術のほか、腹腔鏡下胃切除、内視鏡治療などがあります。化学療法は手術と併用して行われる補助化学療法と、手術が困難な状況で選択される緩和的化学療法があります。
胃ポリープ
ポリープとはイボのような「突起物」を表す言葉で、胃ポリープとは胃の粘膜が隆起してできたイボのようなものです。胃ポリープは症状を引き起こすこともなく、大腸ポリープのようにがんになるリスクがないものがほとんどです。まれに、出血を伴ったり、がん化するものがあるため、内視鏡検査で見つかって判断が付きにくい場合には組織を採取して病理検査を行ったり、ポリープ全体を切除する場合があります。
胃粘膜下腫瘍
胃の粘膜よりも深い層に発生する腫瘍です。良性の場合と悪性の場合があります。良性の場合には症状もなく問題はありませんが、まれに粘膜から突き出して巨大化することもありますので経過観察が必要です。消化管の壁にできるGIST(消化管間質腫瘍)であった場合には、肝臓やリンパ節に転移する可能性があるため、外科的処置が必要になります。
急性胃粘膜病変
急性胃粘膜病変(AGML)とは、急性胃炎、急性胃潰瘍などの粘膜のびらん、潰瘍、出血などを伴う症状の総称です。突然、上腹部やみぞおちに激しい痛みを覚え、吐き気をもよおして嘔吐したり、吐血したりするのが特徴です。
過度の飲酒や刺激物の過剰摂取、精神的ストレスや身体的疲労、解熱鎮痛薬の影響、魚介に寄生するアニサキス感染など、原因は多々あります。ピロリ菌の影響で発症するという指摘もあります。
内視鏡検査で粘膜のダメージがさほど大きくなければ胃酸の分泌を抑えた上で粘膜を修復する薬などを処方します。アニサキスなどの原因が特定できれば取り除きます。
急激に症状が悪化するのが特徴ですが、適切な治療で回復も比較的早いといえます。