暑い・運動をした時には誰でも汗が出ますが、涼しくて特に身体を動かしたわけではないのに体質的に汗が多い方がいらっしゃいます。特に緊張などのストレスで大量に汗が出る場合、多汗症の可能性があります。
多汗症では、汗の出やすい場所によっていくつかのタイプに分けられます。代表的なものとしては、脇に多いタイプ、頭や顔に多いタイプ、手のひらに多いタイプがあります。このうち、手のひらの汗が多いタイプは手掌多汗症と呼ばれています。
手汗・手掌多汗症を含め多汗症は、自覚症状に合わせて重症度を判定できるセルフチェックが可能です。
ただし、汗に関する感覚には個人差がありますから、客観的な症状が軽くてもお悩みがあるようでしたら受診して、検査を受け、適切な治療を受けることをおすすめします。
症状の具体的な内容でセルフチェックするためのもので、レベルが3段階に分けられます。
レベル3になるほど重症となります。
皮膚が軽く湿っている状態。
触れると汗ばんでいるとわかるが、見た目の変化はほとんどない。
皮膚にツヤやテカリがあるように見えることもある。
皮膚に汗が水滴になっているのが見た目でわかる。
濡れてはいても、汗が流れることはない。
汗が水滴になり、したたり落ちる。
多汗の症状の有無や重症度を判定するものと、具体的な症状で分けるものがあります。
多汗の重症度を判定するための指標で、4段階に分けられています。
※③と④は重症の指標となります。
問診でお悩みの内容や症状などについてくわしくうかがった上で、下記のような検査を行います。
汗に反応するヨード(ヨウ素)デンプンを吸収させた紙を用いた検査です。
発汗した部分が黒くなるため、その範囲や変色の仕方によって重症度を判定できます。
汗の量を計測する検査です。
ろ紙が付いたビニール袋を指定の時間、手に付けて検査します。
汗を蒸発させて湿度を測り、多汗症の程度を調べる検査です。
手をカプセルで覆ってガスを送気し、検査します。
外用剤などによる治療もありますが、効果には個人差が大きく、効果があった場合も継続しないため定期的な受診が必要になります。手汗・手掌多汗症を根本的に解決するためには、手術が必要です。
手術では、手につながる交感神経を部分的に遮断します。脇の下の皮膚に3㎜程度の穴を開け、胸腔鏡という内視鏡を挿入して交感神経を部分的に遮断する交感神経遮断術を用います。
汗には、上昇し過ぎた体温を下げるという大切な役割があります。交感神経遮断術で交感神経が遮断されると体温を下げられるだけの十分な発汗ができないと脳が判断して、遮断されていない部分の発汗を増やしてしまう可能性があります。そのため、手汗・手掌多汗症の手術で交感神経遮断術を行った場合、背中や胸、おしり、太ももなどでの発汗量が増えてしまう代償性発汗という副作用が起こる可能性があります。
代償性発汗の副作用を最小限に抑えるために、当院では第4交感神経を切除する低位交感神経遮断術を行っています。
交感神経は視床下部から背骨の両側に延びている神経で、上の肋骨に近い部分から、第2交感神経(Th2)、その下の第3交感神経(Th3)、さらに下の第4交感神経(Th4)の分岐があります。第2交感神経の遮断では手だけでなく顔面からの発汗もなくなってしまうため、代償性発汗リスクがとても高くなります。第3交感神経の遮断でも代償性発汗リスクはかなり高い状態です。第4交感神経の遮断では、手汗を効果的に解消し、代償性発汗リスクも100%回避まではいきませんがかなり抑えることができます。第4交感神経は他の交感神経より低い位置にあるため、ここを遮断する手術は低位交感神経遮断術と呼ばれています。当院では第4交感神経を切除するこの低位交感神経遮断術を用いた手術を行っています。
手掌多汗症で行う手術は、胸部交感神経節切断術です。胸部交感神経は、背骨の脇を縦に走行する神経です。わきの下に3mm程度の小さな穴を1カ所あけ胸腔鏡というテレビカメラ(内視鏡)を挿入し、
この胸部交感神経を部分的に切断します。
手術時間は20分間程で、麻酔も含めて1時間弱で治療は終わります。
目が覚めたときには手の汗が出ない状態になっており、当日帰宅できます。
手術について当院では、ご自身で副作用などの判断ができる年齢として、原則15歳以上としております。
15歳未満の方は、一度当院にご来院して、ご相談ください。
この治療は汗が多く出る手や足を水に浸し、弱い電流を流すという治療法です。水が電気分解されて発生した水素イオンが、汗腺をブロックして汗の生成を抑制します。
利点は、問題となるような副作用はない事です。子供にも治療できますが、通電によりビリビリする感じを嫌がる子供もいます。骨折治療やペースメーカーなどで体に金属の入っている方には治療できません。
欠点は、効果に個人差がある事です。通常1回20分間の治療を週に1回、計5回受けていただきます。効く人はその間に汗が減っていきます。もし5回治療して全く汗が減らないようでしたら、それ以上続けても効果は期待できません。また治療効果は持続しません。治療をやめるとしばらくしてまた汗が出てきますので、繰り返し行う必要があります。
食中毒などで問題となるボツリヌス菌が作る毒素は、神経を麻痺させる作用を持っています。これを精製して人体に害がない状態にしたものを、脇や手などの汗の多い所に注射することで交感神経を麻痺させて、汗を出すのを抑えます。
1回の注射で数ヶ月から半年ほど効果が持続しますが、その後また汗がでてきます。そのため繰り返し治療を受ける必要があります。
脇の汗の治療には健康保険が適応されます。費用は3割負担で約3万円です。
手掌や足裏の多汗の治療には健康保険に適用していないため、一回約10万円の費用がかかります。
アルミニウムローションを汗の多い部位に塗り、汗腺を塞いで汗をかくのを抑える治療です。脇の汗には有効で、約半数の方はこれだけで脇の汗が減ります。
しかし手掌や足裏の汗にはあまり効果はありません。脇に比べて、手や足の皮膚は厚いため効果が出にくいのだと思われます。
夜の寝る前に脇の汗が多い所へ塗って、朝に洗い流すだけの簡単な治療です。まれにかぶれることがあり、その場合には中止してください。
当院での処置料、手術料につきましては、クレジット・カード払いも取り扱っています。
高額療養費とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。70歳未満の方で、医療費が高額になることが事前にわかっている場合には、「限度額適用認定証」を提示する方法が便利です。
ご本人またはご本人と生計を同じにしているご家族の方が、年間で10万円以上の医療費をお支払になられた場合、医療費控除が適用されます。医療費控除では所得税の還付または軽減を受ける事が出来ます。この場合の医療費とは次の3つをさします。
当院が発行するレシートや領収証を保管しておいて下さい。
薬局で購入された場合などは、レシートや領収証に購入された薬品名を記入しておいてください。
ここでは病気の予防の為や健康増進の為に購入された薬剤は控除の対象外となります。
通院の為に利用された電車やバスなどの交通機関の費用は料金をメモなどに残しておいてください。
タクシーの場合は必ず領収証をもらっておいて下さい。
サラリーマンや公務員などの給与所得者は源泉徴収票、印鑑、領収証やメモなどを税務署にお持ちになられて、還付申告を行ってください。毎年確定申告をされている方は、申告の際に医療費控除の欄に記入して申告をしてください。
任意の生命保険・入院保険などに加入されている方は手術を受けた際に、手術給付金を受取れる場合があります。保険会社にご連絡・ご相談された上で必要書類を持参してください。
全治された際に診断書を発行致します。ただし、手術の種類や加入された時期・保険の種類などによっては受取れない場合がありますので、事前にご確認下さい。
第1交感神経を損傷するとおこる症状で、上眼瞼下垂、眼球陥凹、縮瞳などがあります。以前は第2交感神経を切断する手術をしていたため、誤って第一交感神経を損傷してしまうことがありましたが、最近の手術では第3交感神経より末梢側の神経を切るため、ホルネル症候群をおこすことはまずありません。
手術は肺を縮ませて行います。手術終了時には肺を膨らませますが、まれに肺が元の状態に膨らみきらない状態が続くことがあります。この状態を気胸といいます。気胸の程度によっては、ドレナージ処置が必要な事があります。
交感神経の心臓枝を両側で切ってしまうと、脈が遅くなってしまうことがあります。
当院の手術では交感神経心臓枝は温存しますので、除脈はおこりません。
メリットは、いままで悩んでいた手汗が解消される事です。多くの方が“こんなに楽になるなんて”という感想をお話しされます。
デメリットは、代償性発汗です。多くの方には“これくらいの汗の増え方であれば問題ありません”、“いままで手汗で悩んでいた事に比べれば何でもありません”といって頂いております。しかし中には“背中の汗が多くて困る”という方もいらっしゃいます。手術による代償性発汗のリスクはゼロではない事を十分に認識していただく事が大切です。
手のひらと足の裏では関係する交感神経が違います。そのため手掌多汗症の手術で足裏の汗が止まる事はありません。まれですが代償性発汗で足裏の汗が増してしまうこともあります。
もちろん可能です。人によっては利き手の汗が減った事で生活への不自由や不快感がなくなり、あえて反対側の手術をしなくても良くなることもあります。手の使い方(仕事内容などで)によっては、必ずしも両側の手術をしなければならないという事はありません。
そのため当院では一度に両側の手の神経を切る手術は行わず、片方ずつ手術をしています。
手術は原則として高校生以上に行っております。これは代償性発汗などの手術による副作用について、患者自身が十分に理解できる事が必要なためです。
小学生には、まずイオントフォレーシスをお勧めしています。
しかし手掌多汗症が原因によるいじめや嫌がらせなどでお悩みの方には、個別に対応しておりますのでご相談ください。
所在地 | 〒270-2225 千葉県松戸市東松戸3-7-19 |
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電話番号 | 047-312-7707 |
最寄り駅 | 東松戸駅徒歩2分 |
駐車場 | 15台完備 |
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
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9:00~11:00 | ● | ● | ● | ― | ● | ― | ― | ― |
16:00~18:00 | ● | ● | ● | ― | ● | ▲ | ― | ― |
日帰り手術 | ★ | ★ | ※ | ― | ★ | ※ | ― | ― |
▲土曜:16:00~19:00
★日帰り手術:11:00~16:00
※:手掌多汗症の手術日は、毎週水曜日と、 月1回土曜日に手術をおこなっております。
初診時に予約は必要ありませんが検査もありますので、
終診の30分前までにお越しください。